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  • JR東日本初の特急形車両
    651系は485系の後継機として1989年3月11日に登場した特急形車両です。
    このころ既存の特急名にスーパーを付けるのが流行りだしたころで、651系も流行に乗って「スーパーひたち」になりました。最高時速130kmは、当時の在来線の特急列車としては最も速いものでした。ちなみにJR化後にJR東日本が独自に開発した車両の形式の頭にはEが付きますが、当時はまだそういった慣例が無かったため数字のみの形式となっています。

    7両固定の基本編成と4両固定の付属編成がそれぞれ9本ずつ(計99両)投入されました。
    車体カラーは白を基調に、運転台周りから屋根にかけてのグレー塗装がアクセントになっています。この塗色に独特のフォルムから「タキシードボディーのすごいヤツ」という公式キャッチコピーによって、晩年までタキシードボディの愛称で世代を問わず親しまれることとなります。


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  • 車内設備
    列車は上野・桐生寄りが1号車、原ノ町寄りが7号車(付属編成は4号車)で、座席定員は基本編成が398人(このうちグリーン車は36人)、付属編成が240人です。
    付属編成も波動用になってから1〜4号車として運転されていましたが、元々は8〜11号車でした。それを彷彿させたのが2018年運転の「足利大藤まつり号」で、号車シールをわざわざ昔の8〜11号車に貼り直し、さらに指定席券も8〜11号車として発売されました。

    設備やシートは定期運用引退時のままとなっています。トイレは基本編成が1・3・4・6号車、付属編成は1・3号車になります。グリーン車は基本編成の4号車となります。デビュー当時はAV機器などが備わっていましたが、2000年のリニューアル工事で撤去されています。

    付属編成が普通列車として東日本大震災で津波の被害を受けた区間を走るようになってからは、2号車の荷物置き場に災害時用の非常用はしごと簡易トイレが備えられました。また、車内整備の手間を省くために座席は全てボックス席の形にされていました。乗客自ら回転させることはできましたが、下車時に元に戻さない乗客が多かったことから、動かさないよう呼びかけることもありました。そのほか、リネンの座席カバーも常に外された状態となっていました。

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  • 運用
    1989年3月11日から速達タイプの「スーパーひたち」として上野−仙台で運転を開始。1997年10月にE653系が投入され、停車駅の多いビジネス客向けの「フレッシュひたち」が登場すると、651系でも一部編成が「フレッシュひたち」として上野−勝田で運転されるようになりました。そのほか「おはようフレッシュひたち」などのライナー特急としても運行された時期がありました。

    「スーパーひたち」の上野−いわきは基本編成+付属編成の11両での運転が基本で、勝田−仙台は基本編成または付属編成のみの単独走行となり、増解結は勝田駅およびいわき駅で行われていました。
    651系の「フレッシュひたち」は上野−勝田での運転となるため、基本編成の単独運行もしくは11両で運転されて、勝田駅到着後はそのまま車庫に入るので増解結は行われませんでした。

    東日本大震災が無ければ2012年秋に引退することが決まっていましたが、地震や津波、福島第一原子力発電所での事故の影響でJR常磐線が不通となったり、新型車両E657系の導入予定が遅れるなどして引退が半年ほど先延ばしになります。
    E657系が出揃う2013年3月15日までは一部の「スーパーひたち」と「フレッシュひたち68・75号」に限定して、11両で上野−いわきで運転されました(フレッシュひたちは上野−勝田を11両で運転)

    運用終了後は大多数が大宮総合車両センターへ転属しますが、2013年10月からE657系の車内改造と検査入場が重なることで車両不足になることから、「フレッシュひたち4・61号」に限り、11両固定で代走されました。車内改造は2015年1月末で終わりましたが、代走は3月のダイヤ改正前日まで続きました。ちなみに代走期間中はヘッドサインの点灯はありませんでした。

    代走終了後はE653系の跡を継いで波動用として活躍を始めますが、2017年7月22日からはいわき−竜田で定期普通列車として運転を開始します。この普通列車は同年秋の竜田−富岡の運転再開を広く告知してほしいという地元の要望から誕生し、10月21日の運転再開後は富岡まで延長されました。特急形車両を使用した普通列車は現代では希少な存在でしたが、2020年3月14日のJR常磐線全線運転再開に合わせ、その役目を終えて勝田車両センターに所属するの全て651系の運用が終了しました。
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  • 東日本大震災の影響
    地震による津波や福島第一原子力発電所の原子力災害に巻き込まれた編成はありませんでしたが、「スーパーひたち50号」として原ノ町駅で待機していたK202編成が鉄路の分断によって行き場を失いました。上野口の運転再開後の特急本数や、翌年には引退が決まっていたこともあって無理に動かされることは無く、そのまま留置され続けました。そして震災から5年経った2016年3月17日の深夜に、同じく原ノ町駅に留置されていた415系1500番代K534編成とともにトレーラーに載せられて郡山総合車両センターへ入場し、廃車となってしまいました。

    一方「スーパーひたち54号」として仙台車両センターで発車準備を進めていたK209編成も地震の影響で身動きが取れない状態となり、仙台車両センターに足止めされることになりました。JR常磐線は運転再開が見込めない中、JR東北本線の黒磯−安積永盛が運転を再開してから10日後の4月27日に、JR東北本線からJR武蔵野線を経由して勝田車両センターに帰ってくることができました。
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  • 引退後
    2013年3月のダイヤ改正で引退しましたが、部品取りを除いて廃車にはならず大宮総合車両センターへ転属して、JR高崎線の特急「あかぎ」、「スワローあかぎ」、JR吾妻線の特急「草津」として転用されます。転用に当たっては交流機器を取り払って直流電車化し、車両形式も251系もしくは253系の1000番代となるようでしたが、晩年の485系「彩」(長野車)同様に交流機器を残しつつも配線をカットして使用しないことで、651系のまま1000番代として区分されることになりました。
    車体カラーも微妙に変わり、窓下に湘南色をイメージしたオレンジの帯が追加されています。なお、大宮に転属した付属編成のうち1本は、大幅に改造されて国府津車両センターへ再転属し、2016年7月16日から2020年3月29日までJR伊東線で快速「伊豆クレイル」として運転されました。

    勝田車両センターに残った編成は前述のフレッシュひたち代走以外に、2014年秋から波動用としての運転を開始します。かつて485系K60編成やE653系で運転されていた南関東方面への臨時快速列車等に充当されるようにもなります。付属編成は活躍の場がありませんでしたが、2016年から2019年まで快速「足利大藤まつり号」に充当されました。また、前述のとおり2017年夏からはいわき−竜田(後に富岡まで延長)の普通列車としても運転されました。基本編成の波動輸送は2019年1月の成田山初詣号が最後となりました。

    最後まで勝田車両センターに残ったK103・K105・K201・K205編成よりも前に廃車になった編成の座席等の一部が、茨城県筑西市にあるザ・ヒロサワ・シティに保管されています。同施設のユメノバ内にあるレールパークではD51形蒸気機関車からE2系新幹線といった数多くの車両が展示されていますが、651系の部品については一般公開はされていません。しかし毎年秋開催の下館商工まつりなどで展示されることがあります。
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  • 御乗用のK103編成
    K103編成は御乗用として落成時よりグリーン車のサロ651-3に防弾ガラスが装備されていました。しかしお召し列車や御乗用での活躍は一度も無く、間もなくして専用のE655系がデビューしています。

    2016年8月にJR羽越本線でお召し列車の運行が決まると、暫く運用が無かったK103編成を疎開先の高萩駅からわざわざ引っ張り出し、サロ651-3だけ郡山総合車両センターに入場させて綺麗に整備しました。ほかの普通車6両はボロボロなので使えなく、お召し当日は比較的綺麗なK105編成にサロ651-3を組成して運転されたましたが、天皇・皇后両陛下はE655系に御乗されたため出番は無く、控え車として役目を全うしました。ちなみに残ったボロボロの6両とK105編成から抜かれたサロ651-5とで、急行「ロックインジャパン号」に充当され、国内最大級の夏フェスの輸送に活躍しました。
    そんなK103編成も勝田車両センター最後の基本編成として残されましたが、2019年8月末日で廃車となっています。


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  • 転属組の今後の動向
    国府津車両センターへ再転属した「伊豆クレイル」は、2020年3月29日の定期運行終了後も静岡アフターデスティネーションキャンペーンのオープニングとクロージングイベントで団体列車として運行される予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響で催行中止となってしまいました。そして有終の美を飾ることができないまま、同年10月に廃車となってしまいました。

    大宮総合車両センターの付属編成は2015年3月のダイヤ改正でお役御免となりそのまま全て廃車となった一方で、2018年にK102編成を種車としたOM207編成が追加投入されました。それでも車齢は30年に迫るため、2022年ごろに鎌倉車両センターのE259系で置き換えるという計画が浮上します。しかし新型コロナウィルス感染症の影響で置き換え計画は一旦白紙に。E259系を房総地区へ転属させ、玉突きで転出してくる255系で651系を置き換える案もあったようですが、コロナ禍でも時勢は刻一刻と変化してゆき、2023年3月のダイヤ改正で本来波動用として投入されるはずだったE257系5500番代で置き換えられました。引退後は全車廃車という話しもありましたが、どこにも保存されないというのはもったいないということで、先頭車1両を勝田車両センターで保存する動きがあったそうです。しかしそれが実現することは無かったものの、先頭車1両は2024年現在も郡山総合車両センターに保管され、鉄道博物館に収蔵されるのではという噂もあり、今後が期待されます。
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